甘いお兄さん

5/5
前へ
/142ページ
次へ
「ええやろ。別にほんまの兄弟ちゃうんやから…」 つい先日親父の口からでた言葉をいう。 兄さんと俺は血のつながった兄弟ではないという事実を。 「兄さん」 その話をきいたときの俺は、なんとなく納得してしまった。 今まで感じてきた劣等感。 兄さんと俺の真逆の性格。 全部の矛盾がつながった。 それから気づかされたことは 兄さんに対する本当の感情。 「好き…」 「は?」 「好き」 「………」 「俺気付いてん。 なんでパティシエ目指してんのか、なんで兄さんが女つれてきただけでいらいらすんのか、なんで昔の話を憶えてたくらいでこんな嬉しいのか。 今、気付いたわ。 俺、兄さんのこと…」 手をとめ、兄さんの方を向いたとたんに視界が真っ暗になる。 「…それほんまやったら、まじで嬉しいわ」 「ほんまや、変態」 赤くなった顔を隠し、つんけんしながら言うと嬉しそうに笑う。 「ほんとは気付いてたんやで?俺とお前は血がつながってないって。 それに俺はずっとお前が好きやった」 「女好きがよういうわ」 「貴ちゃんが俺に言うたこと忘れとったやろ? それの憂さ晴らしや」 「最低な【兄貴】や、な」 きっと【兄弟】じゃなくても、俺たちは出逢っていただろう。 寒いことをいうならば、 【血】という繋がりじゃなく【赤い糸】で繋がっているから。 「それより、スポンジええの?煙でとるよ」 「あ゛」 甘い甘いお兄さん。 いつまでも一緒にいて下さい。 今度は家族じゃなく。 恋人として。   
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加