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「ええやろ。別にほんまの兄弟ちゃうんやから…」
つい先日親父の口からでた言葉をいう。
兄さんと俺は血のつながった兄弟ではないという事実を。
「兄さん」
その話をきいたときの俺は、なんとなく納得してしまった。
今まで感じてきた劣等感。
兄さんと俺の真逆の性格。
全部の矛盾がつながった。
それから気づかされたことは
兄さんに対する本当の感情。
「好き…」
「は?」
「好き」
「………」
「俺気付いてん。
なんでパティシエ目指してんのか、なんで兄さんが女つれてきただけでいらいらすんのか、なんで昔の話を憶えてたくらいでこんな嬉しいのか。
今、気付いたわ。
俺、兄さんのこと…」
手をとめ、兄さんの方を向いたとたんに視界が真っ暗になる。
「…それほんまやったら、まじで嬉しいわ」
「ほんまや、変態」
赤くなった顔を隠し、つんけんしながら言うと嬉しそうに笑う。
「ほんとは気付いてたんやで?俺とお前は血がつながってないって。
それに俺はずっとお前が好きやった」
「女好きがよういうわ」
「貴ちゃんが俺に言うたこと忘れとったやろ?
それの憂さ晴らしや」
「最低な【兄貴】や、な」
きっと【兄弟】じゃなくても、俺たちは出逢っていただろう。
寒いことをいうならば、
【血】という繋がりじゃなく【赤い糸】で繋がっているから。
「それより、スポンジええの?煙でとるよ」
「あ゛」
甘い甘いお兄さん。
いつまでも一緒にいて下さい。
今度は家族じゃなく。
恋人として。
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