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「菊池ぃ」
祭囃子が心を踊らせはじめたころに白井がやってきた。
「おせーよ」
「ごめんて、ん……」
謝罪のあとに言葉を止めてこちらをまじまじと見つめる。
「なんだよ…」
「菊池かわいい」
無理矢理渡された甚平をしぶしぶきている俺をみてそういう。
白井も同じ格好だ。
急いで走ってきたせいか甚平が少しはだけていて、その間からちらりと見える白い肌に心臓が鳴り、今の言葉がプラスされ、また心が踊る。
「さー、いこーいこー」
「…お前の方がかわいいわ」
「え、なんて?」
「なーんでも」
祭囃子に誘われて俺たちは雑踏の中に溶けていった。
「きくち!わたあめだ!」
「てめー食いすぎだ!」
終
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