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「なんて?」
「俺、あと3ヶ月やて」
「…妊娠?」
「わ、福ちゃんがおもろいボケした」
ふざけてる場合ちゃうねんと言いたかったが、きちんと聞き取ることが怖くて、聞き返すことはしなかった。
「…………」
「福ちゃん、お腹へった、ミトスパ食べたい」
言われたままにキッチンに向かい調理を始める。
どうやって作るんだっけ?
水はどうやってだすんだっけ?
野菜はどこにあるんだっけ?
涙はどうやって止めるんだっけ
「福ちゃん」
「…………」
「ふくちゃん」
やさしい声になり、調理をしている俺の背中を抱きしめる。
「嫌いにならんでな」
「嫌いに…っは…馬鹿やん」
強きに笑って跳ね返す。
「なんで笑うん?」
「なるわけないし」
「ふふ、福ちゃん大好き」
数ヵ月前から体調が悪そうなのはよくしっていた。それでも癌、しかも末期なんて誰が考えただろう、昔から馴染みのある顔、今は頬も痩せ青白い、それでも世間に晒された美顔は変わらなかった。
「な」
「…」
「首を絞めたら苦しいかな?」
「そりゃ苦しいやろ」
「どのくらいかな?」
「計り知れんくらい」
「んー…じゃあさ、福ちゃんに絞められたら苦しくないかな?」
「あほか、誰にやられても苦しいわ」
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