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「……。」
いきなり現れた俺を静かに見つめるのは、恐らく新入学生だと思う……まだあどけなさが残る少年。少し碧みの掛かった大きな瞳が俺を映す。
黒髪の短髪を風により揺らし、ただ静かに俺を見つめた。
「まだ授業中だぞ?」
「……。」
無口だ……。
良く見ると両耳にヘッドホン式のイヤホンが付けられている。
とことん嘗めた奴だな……。
俺は溜め息を吐きながらそのイヤホンを無理矢理外す。
案外抵抗はしなかったが、変わりに冷たい視線を奴は送った。
「何だその目は……大体学校で携帯は使うな、禁止事項だろう。没収だ」
携帯を取り上げると、奴は心底嫌そうな顔をする。
仕方ないだろ、悪い物は悪いんだから。
「……オマエ、誰だ」
「浅井晃……新しくこの学園に来た教師だ」
「浅、井……?」
名乗りを上げると、奴は目を丸くして小首を軽く傾げる。
意外と可愛い奴だな……
「あぁ、浅井だ。オマエは?」
さっき思った事が気付かれないよう、俺は相手の言葉を待った。
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