懐かしき呼び鈴

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「携帯……壊しちゃやだよ?」 「あ、あぁ……」 俺は口元を抑え顔を俯かせながら言った。 恥ずかしい事に、多分今の俺の顔は熟れたリンゴ並みに真っ赤だっただろう。 そんな俺を神威は横目で見ると、その場を後にした。 俺は少しの間、屋上でただ混乱し動揺して速くなった鼓動を静まらせるのに必死こく。 だが、なかなか静まらない鼓動は、先ほどの事を思い出すと更に速度を上げた。 ――一体、何なんだよ! 俺はその時耳に届いた授業の終了を告げる、昔と変わらない呼び鈴を合図に屋上を出る。 ――これが、奴との初めての出会いだった。
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