懐かしき呼び鈴

2/9

828人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
桜が舞う並木道をゆっくりと歩く。 両端から、道を覆うようにして植えられた桜は既に満開。 風に吹かれ舞い散る花びらが、道を行く生徒達を迎い入れるかのように宙を舞い、地に落ちた。 もうすぐ歩けば『風凛学園』と書かれた大きくそびえ立つ門が見えてくるはずだ。 『風凛学園』 賑わう商店街から少し離れた丘の上に設置された高等学校。 偏差値もそこそこで、部活動も多々、姿形もあの頃と何も変わってない。 七年前、俺はこの学園を旅立った。 浅井晃(あさいあきら)、それが俺の名前。 今年25歳になる。 身体付きはそこそこ、顔は……多分普通だと信じたい。 その俺が青春時代の頃の夢だった教師と言う夢を叶え、贅沢な事に母校で勤める事となった俺は今、学園の校長兼理事長へ挨拶へ向かう最中だ。 緊張などは全く無い。 逆に懐かしさと嬉しさが混じり胸を踊らせている。 柄にも無く軽くスキップを刻みながら、俺は長い桜道を歩いた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

828人が本棚に入れています
本棚に追加