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俺は校長室と書かれた札を確認して、軽くノックをする。
あまりに興奮し過ぎで部屋を間違えてちゃ困るからな。
少ししてから、部屋の中から掠れたような声で「どうぞ」と聞こえた。
俺は一言断り入り、一番に目に入る焦げ茶色の机の奥で、窓の外から校庭を見つめる一人の男に頭を下げる。
「お久しぶりです櫻井理事長」
「良く戻って来てくれましたね、浅井君」
相手の言葉を聞いてから俺はゆっくりと頭を上げた。
風凛学園の学校長兼理事長『櫻井仁志』、俺がいた時期では教頭を勤めていた。
七年経ってもその姿こそは少し老いたような気もするが、その優しげな瞳は変わっていない。
「母校を就く事が夢だったので、とても嬉しいです。ありがとうございます」
俺はもう一度深く謝礼のお辞儀をした。
「そう言われると此方もありがたいですよ。初の仕事は慣れない物です。職員に貴方と同世代の者がいますから、何かと訪ねるといいですよ」
「はいっ」
俺は子供みたく元気な返事をした。
さすがに少し焦りはしたけど、理事長の相変わらずの愛嬌に、思わず俺も心が静まる。
その後、何分か雑談をしてから、俺は仕事場である職員室へ向かった。
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