痛み

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 敢えて言うなら、硬めのトマトに包丁を入れる様な…。そんな感じだった。  最初は鋒が皮膚に食い込み、ぷち、と音を立てた。意外と皮膚って硬いんだ、と思ったのはその瞬間。そんなに綺麗にスッパリ切れるものでもないらしい。…呑気に納得している場合じゃないのに。  続いて皮膚の裂け目がじんじんと痛み出し、鈍痛と共に血が沸き上がる瞬間の熱を感じた。  自慢じゃないが、私は華奢と言うか、皆に良く「痩せてていいよね」なんて言われる。だからこそ、鈍痛が直に響いている訳で。  ああ、もう私、駄目なんだろうなあ…。と覚悟を決めて目蓋を閉じた瞬間、ぱたりと私の頬に暖かい液体が落ちた。 「泣いて…るの?」  そうか。彼を泣かせたのは、紛れもなく私。この痛みは彼からの制裁なんだ。…仕方無いよね、ずっと騙していたんだもの。  でもまさか、こんな事になるとは思わなかったなぁ…。だって、この為に貴方を迎え入れたんだもの。おとなしくて、私に一切何も言えない、逆らえない貴方を。  こんな風にキレるなんて想定外だよ。…ああ、外野が以前何か言ってたかもしれない。友達止めちゃったから聞く耳すら持たなかったけど。  あの二人、私の
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