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「…あの」
話しかけられた。
「へ?あ、はいはい、何でしょうか?」
思わず敬語を使う。
「…このことは…その、先生に黙ってて欲しいのですが…」
このこと?
と、口で言いかけ時点で思い至る。
「あぁ、プールで浮いてたことか?」
軽く頷く。
「別に、言いやしない」
「…ありがとうございます」
どうも話し方に変な間がある人のようだ。
「何でプールに?」
「…浮きたかったから?」
疑問形で返さんで欲しい。
「……まぁ、いいか」
「…?」
人には他人に言えないことの一つや二つ、あるに違いない。
ならば、これ以上彼女を問いただすのもどうかと思う。
それに、俺はプライバシーを尊重する人間だ。
――ぶっちゃけると面倒なことを避けたいだけだが…
「んじゃ、まぁ俺は用事済まして帰るから
風邪引かないようにな、えっと…かしわ…さん?」
「…はい、気をつけます」
それだけいうと俺は部室に向かった。
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