一章

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部室に入り、目的の物を探す。 「お、あったあった」 程なく見つけたそれを持って部室の扉に手をかけたとき、俺はあることに気付いた。 ――彼女はどこで着替えたのだろうか? 更衣室は開いていない。 とすれば、着替えられる場所がないのでは?と考え、ならば更衣室を開けてあげるべきか?と思い付く。 俺はそのことを彼女に伝えようと扉を開けた。 が、 彼女はすでにプールサイドにいなかった。 かといって、あの恰好でプールから出られるわけがない。 そう思ったときには、俺は彼女を探しにまたプールサイドに上がろうと階段に向かって、 ……ふと。 視界に入ったスペース、部室と塀の間に目を向けた。 ―いや、向けてしまったのだ。 そこで、彼女は着替えていた。 「…」 「…」 沈黙。 彼女は着替え途中ではあったが、既に制服を身につけていた。 しかし、 ちょうど水着を足から抜き取るところに出くわした。 断じて見えてはいない。 が、この状況は非常にまずい。 「ごめん!」 言うが早いか回れ右。 あぁ、俺の評価はがた落ちだろうな。 あったばっかりで気にするような評価なんてあったものじゃないと思うが… 「…別に、気にしてないです」着替え終えたのか、俺の横までやって来た彼女の顔には― 無表情ながらも、明らかな軽蔑の念が見て取れました。 「……スイマセンデシタ」 「…もういいですよ」 その後、フェンスから忍び込んだであろう彼女は正しい出口から帰っていった。 「(疲れた……)」 彼女を送り出した俺は暫くの間突っ立っていた。 校舎から予鈴が聞こえる。 五限は体育だ。 「……戻ろ」 俺はプールをあとにした。
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