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「……はぁ」
―昼休み
25メートル先まで透き通ったプールの水を眺めつつ、俺はため息をついた。
別に、後輩のお目付け役に不満があるわけじゃない。
彼女と話すことは楽しかったし、変な言い方にはなるが、一緒に居るだけで良い暇つぶしになった。
ただ―
ただあの時の自分を、今更ながらに情けないと思ったのだ。
――数分前
昼食を済ませた俺は、友人の誘いを断ってから教室を出た。
そして、いつも通るルートを今日は逸れ、体育教官室でプールの鍵を貰う。
―思えば今までの俺達は不法侵入を繰り返してきた。
しかし、これからは堂々と侵入できる。
俺の中の罪悪感も、少しは軽くなるというものだ。
そうして目的地に着いた俺を待っていたのは……
右肩に浮輪、左手にビニールバッグを持ち、心なしか不機嫌なように見える後輩の姿だった。
「…遅いですよ、先輩」
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