一章

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ここから見る限りでは、目を閉じてはいるが手足は動いているのが確認できる。 殺人や自殺でないことが分かって一先ず安心。 それにしても何故、どうやって、等々の疑問を頭に浮かべている時だった。 ふと、彼女に目をやった… ―目があった。 彼女の頭が手前にあるため、俺が上から覗き込む形になる。 彼女は目を見開いてこちらを見上げている。 上目使いで見られている、と言うよりも上から信じられない物が降ってきた、といった感じだろうか。 まぁまさしくその通りだったのであろう。 このような顔の後輩を見る機会は、これからしばらく無かったのだから。 たっぷり五秒間見つめ合った後、先に反応を見せたのは彼女の方だった。 「…何を、やってるんですか?」 「……えっと、靴、取りに来た」 思わず答えてしまった。 「…そうですか」 それだけいうと、彼女は体勢を直し、プールからあがる。 「(ちっさい…)」 プールサイドに立った彼女を見て、まずそう思った。 自分自身が人よりでかいのを差し引いても、彼女は150もないように見える。 ――それともこれが普通で、俺の周りがでかいのか? 肌は白く、肩甲骨の下くらいまである栗色の髪は、緩くウェーブがかかっている。 顔立ちはととのっており、総合すると「お人形さんのような」という言葉がとてもしっくりくる。 不思議な点、といえば、指定水着のないこの高校で「6-4柏」と書いたスクール水着を着ている点だ。 …小六の頃の水着がまだ入るのは、いくらなんでも発育不足じゃないか?
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