44人が本棚に入れています
本棚に追加
ここから見る限りでは、目を閉じてはいるが手足は動いているのが確認できる。
殺人や自殺でないことが分かって一先ず安心。
それにしても何故、どうやって、等々の疑問を頭に浮かべている時だった。
ふと、彼女に目をやった…
―目があった。
彼女の頭が手前にあるため、俺が上から覗き込む形になる。
彼女は目を見開いてこちらを見上げている。
上目使いで見られている、と言うよりも上から信じられない物が降ってきた、といった感じだろうか。
まぁまさしくその通りだったのであろう。
このような顔の後輩を見る機会は、これからしばらく無かったのだから。
たっぷり五秒間見つめ合った後、先に反応を見せたのは彼女の方だった。
「…何を、やってるんですか?」
「……えっと、靴、取りに来た」
思わず答えてしまった。
「…そうですか」
それだけいうと、彼女は体勢を直し、プールからあがる。
「(ちっさい…)」
プールサイドに立った彼女を見て、まずそう思った。
自分自身が人よりでかいのを差し引いても、彼女は150もないように見える。
――それともこれが普通で、俺の周りがでかいのか?
肌は白く、肩甲骨の下くらいまである栗色の髪は、緩くウェーブがかかっている。
顔立ちはととのっており、総合すると「お人形さんのような」という言葉がとてもしっくりくる。
不思議な点、といえば、指定水着のないこの高校で「6-4柏」と書いたスクール水着を着ている点だ。
…小六の頃の水着がまだ入るのは、いくらなんでも発育不足じゃないか?
最初のコメントを投稿しよう!