桜色の思ひ出

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「気持ちわりぃんだよ」 なぎ払って捨てた。 ピンクの包装紙に包まれた、贈り物とやら。 贈り主は遂に泣き出した。 益々、腹が立って、その横っ面張り倒したくなる。 本当に見てて苛々する。 「ごめん…ごめんよう…許して…うう…」 鳴きじゃくる犬の顔を、刺すような目で、睨み付けた。 「ごめんじゃねぇよ!!謝れば済むと思ってんのかよクソアマがァァ!!!」 溜まらず椅子を蹴りつけた。 音を立てて転がった椅子の音に、鳴き声が一層、酷くなった。 「ぎゃあぎゃあうるせえんだよ!!!」 犬っころの長い黒髪を掴むと、鳴き面をしたたかテーブルに打ちつけ、コーヒーの熱い海に沈めた。血の気の多い自分は、癇癪のままに、ありったけの罵声を浴びせた。犬ころの分際で、恋人面して贈り物とは、ただじゃ置かない。 「お前が苛々させんのが悪いんだろうがぁぁ!!ああ!?お前がそんなだからこっちが切れんだろうがあああ!!!ああ!?」 鼻腔と口腔から、真っ赤な液体をだらだら流した犬の、ぐちゃぐちゃに前歯が折れた口の中に、桜色の包装紙のブツを突っ込んだ。 「てめーは、それ喰って糞して寝てろ!二度と目ェ覚ますなボケ!!」 ドアを怒りに任せて思い切り強く閉めた。 もう二度とここには現れない決意を胸に。 桜色の包装紙は、 赤く、染まり、 犬ころの舌と口の中の肉片を、削り取り、 錆び付いた味のする、 日本刀に姿を変えた。
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