それから……

3/15
前へ
/176ページ
次へ
いきなり詩子の名前と、予想もしない言葉に頭が真っ白になった。 苦しんでいるって、何だ?! 『とりあえず、戻って来い…それまで詩子は任せてくれ。急ぐから、じゃあな』 「ちょっ…丈太郎さんっ!?」 状況が全く分からないまま丈太郎さんは、電話を切ってしまった。 ろくな説明もしないで、電話を切った…よっぽど急いでいるということ。 その状況に不安が広がる。 詩子が何故苦しんでいるのか 知りたかった。 病気?怪我? それとも 俺が苦しめてるのか? 「八住、早く仕度して帰れ」 電話の前で呆然と立ち尽くし動かなかった俺は、尾島に肩を叩かれ我に返った。 何とも言えない気持ちで尾島を見ると、眉間にシワを寄せ大きな溜め息を吐いた。 「なんて情けない顔をしてる!しゃきっとしろっ!一人で頑張っているんだろう?早く帰って顔を見せてやれ。こっちは気にしなくていい。落ち着いたら帰って来い」 「店長……ありがとうございます!」 礼の言葉も終わらないうちに 俺は駆け出していた。 頭の中は詩子でいっぱいだ。 泣いた事もあったけど、必ず 笑顔を見せてくれる詩子。 お前が苦しんでいる姿なんて 想像出来ない。 本当に何があったんだ、詩子?今直ぐ、行くからな。 .
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11873人が本棚に入れています
本棚に追加