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いきなり詩子の名前と、予想もしない言葉に頭が真っ白になった。
苦しんでいるって、何だ?!
『とりあえず、戻って来い…それまで詩子は任せてくれ。急ぐから、じゃあな』
「ちょっ…丈太郎さんっ!?」
状況が全く分からないまま丈太郎さんは、電話を切ってしまった。
ろくな説明もしないで、電話を切った…よっぽど急いでいるということ。
その状況に不安が広がる。
詩子が何故苦しんでいるのか
知りたかった。
病気?怪我?
それとも
俺が苦しめてるのか?
「八住、早く仕度して帰れ」
電話の前で呆然と立ち尽くし動かなかった俺は、尾島に肩を叩かれ我に返った。
何とも言えない気持ちで尾島を見ると、眉間にシワを寄せ大きな溜め息を吐いた。
「なんて情けない顔をしてる!しゃきっとしろっ!一人で頑張っているんだろう?早く帰って顔を見せてやれ。こっちは気にしなくていい。落ち着いたら帰って来い」
「店長……ありがとうございます!」
礼の言葉も終わらないうちに
俺は駆け出していた。
頭の中は詩子でいっぱいだ。
泣いた事もあったけど、必ず
笑顔を見せてくれる詩子。
お前が苦しんでいる姿なんて
想像出来ない。
本当に何があったんだ、詩子?今直ぐ、行くからな。
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