それから……

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向かっている途中で何度か詩子に電話をしたが、繋がらなかった。 メールもしたが返信はない。 詩子だけならともかく、シロクマにも愛田家にも繋がらない。 いったい 何が起こっているんだろう。 不安ばかりが増えていくので取れない連絡はしない事にした。 本当に必要な時は、向こうから連絡がくるはず。自分は詩子の元に急げばいいだけだ。 落ち着く事は出来なかったが ただ詩子の無事を祈った。 ―――数時間後 久しぶりに戻ってきた街はいつもと変わりない。 懐かしさに浸るのは後にし、タクシーに乗り込むと、シロクマまで急いで貰った。 日の暮れかかった海は優しいオレンジ色で、俺の心を少しだけ癒してくれた。 タクシーがゆっくりと停まりシロクマの前に立って驚いた。 「……シロクマが…休みって」 ドアにはCLOSEの札が下がっている。年末年始以外に休むなんて、初めてだ。 慌ててシロクマの中に入り、二階の部屋に上がった。 「詩子!」 部屋の中は誰もいない。 俺がいた頃、殺風景だった部屋の中は詩子によって少しづつ物が増え温かみを増した部屋になっていた。 人が住んでる、俺をここで待っていてくれていたんだな。 胸が熱くなってくる。 ふと視線を落としたテーブルの上に、走り書きのメモを見つけた。 読むと丈太郎さんから俺への メッセージだ。 『八住へ 着いたら総合病院まで来い』 「…病院!?」 胸がぎゅっとしめつけられる。早く、詩子の顔が見たい。 メモを握り、再び走り出した。 .
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