それから……

7/15
前へ
/176ページ
次へ
夢子とは…… あの時以来、挨拶する程度しか会話をしていない。 多少の戸惑いを見せると、夢子はふぅと軽い溜め息をついて目の前まで近付いて来た。 「ギクシャクしてる場合じゃないよ、八住君」 そう言って俺の胸を押した夢子は、厳しい表情だった。夢子が言っていることはもっともだ。 確かに 戸惑っている時じゃない。 「ああ、そうだな……それで詩子は――」 「私からは何も言えない。自分で見て、確かめて…私これから頼まれた物を取りに行かないといけないの……私なら…傍で支えていて欲しいな。詩子は何で一人で頑張ろうと思ったんだろう?一人じゃ不安だよ」 俺の言葉を遮るように話した内容は、詩子が俺に迷惑をかけまいと、一人で病と闘っている姿しか浮かばなかった。 さっき引いたばかりの嫌な汗が再び出てくる。 いろんな思いでぐちゃぐちゃだ気持ちが悪い。 「ゆ…夢子ちゃん!詩子はどうなっているんだ!?何処にいる?」 玄関に向かって歩いて行く夢子を呼び止めた。まだ肝心な事を聞けないままだ。 「自分で確かめて。部屋は306号室。容態が変わってなければいるはずよ」 「ありがとう!」 今度こそ会える。 エレベーターのボタンを押しタイミング良く開いた扉に乗り込んだ。 そのエレベーターが地下一階に行ってしまったのは、慌ててたからしょうがないとしよう。 .
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11873人が本棚に入れています
本棚に追加