その1

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足に絡み付いた風子を抱き上げると、本宅へとダッシュした。 「きゃあああっー!」 耳元で叫ばれるのも、慣れた。 この雄叫びは楽しんでいる、というのまで分かるようになってしまった。 実際に、風子は 手を叩いて笑っている。 私、保母さんになりたくてここに越して来たわけじゃないんだけどなぁ。 「泰子さーん!フゥちゃんが脱走して来ましたぁ」 「えぇ、またなのフゥちゃん。少しも目が離せないのねぇ」 おっとりのんびり、いつもニコニコの愛田家のマリア様、愛田泰子【アイダ ヤスコ】は家事全般を一人でこなすスーパーお母さんだ。 その姿は、のんびりした性格からは考えられないほど、素早い動きを見せる。 やっぱり、母は凄いよね。 「今、八住君が買い出しに行ってて一人なんです。なので、戻ります!」 風子を泰子にあずけると 再び、ダッシュした。 何故って…… 「あっ!い や ―――ぁ!!」 背中で風子の大泣きが聞こえるが、気にしていると仕事にならないので、急いで店の中に入った。 最近の日課になっている風子のお店顔出しは、シロクマの名物になりつつある。 これで、いいのかな? .
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