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「僕」が書き換えられていく。
インストールされていく中、再生されるのは「彼」との思い出で。
いちばんはじめ。最初に目をあけたとき。彼は笑って、「ティエリア」と名前を呼んでくれた。
目の前に手を差し出されて、何もわからない僕は、ただその手を見つめた。彼は苦笑いを浮かべて僕の頭を撫でた。
にばんめ。はじめて彼に料理を作った日。加減がわからずあまり具の原型を留めていないカレーを、彼は「美味しい」と笑ってくれた。
さんばんめ。彼が、歌を教えてくれた。彼が大切にしていた人がよく歌っていた歌だと。彼は少し寂しそうな顔をしていた。
思い出される記憶全てに、「ココロ」と彼の「想い」があった。
彼との記憶が再生されていく中、僕は泣いていた。
ああ、彼はこんなにも、僕を愛してくれていたのに!
一人は寂しいから。僕が生まれた。
例え身代わりの存在でも、彼は愛してくれていたのだ。
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