口止めの条件

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「とにかく黙っておけよ」 まだ少し赤い顔がぶっきらぼうに言う。 「うんわかったよ」 あっさりそう優音が言うとなんか拍子抜けしたような顔をする。 どこか寂しそうな表情でもある。 「あっあぁ そうか ありがとう」 なんでそんな顔するんだろう? 「そんじゃあ、そんだけだから 悪いなあんな目立つ連れてきかたして」 後ろを向いて出て行こうとする。 「あっ 待って!」 あれ? なんで呼び止めているの? 「だけど条件があるの!」 出て行こうとした背中が驚いたように振り向く。 「あなたのピアノっ 聞かせ? 私が聞き飽きるまで」 言ってる本人も訳が分からないほど、言葉が出てくる。 「いつも遠くから聞いてすごくいいなって 思ってたのっ 何と言うか、その…… あなたのピアノのファンなのっ」 振り向いた顔がまた照れたのか、顔が赤くなっているが、今度イタズラそうに笑っている。 「いいよ」 「えっ!! いいのっ」 「それが口止めの条件だろ?」
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