角砂糖のはなし

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     瓶の中で、彼は言う。   「どうせなら、彼女に食べてほしい」    彼は、とある喫茶店のテーブルに設置された砂糖瓶の中に住んでいる。     そのテーブルには月に一度、長いはちみつ色の髪をした女性が来る。    女性と言っても、まだその表情にはあどけなさがのこっていて、頬はいつもほんのりしたピンク色をしているから、あまり女性と言う言葉はふさわしくないかもしれない。      彼女はいつも紅茶を頼む。そして窓の外、空の色を見ながら、ほぅと溜め息を吐く。      よく客が、溜め息を吐くと幸せが逃げると言っているのを角砂糖は聞いていたので、出来ることなら彼女の溜め息すべて拾ってやりたいと思っていた。    けれど、その憂いさえもきれいだと角砂糖は思う。       「彼女の紅茶に溶けてしまえたら」        しかし、彼女はいつもストレート。瓶にさえ触れたことがない。      いつしか、角砂糖がほぅと溜め息を吐いていた。      いつかの客が、それは恋だよ一目ぼれだよと囁きあっていたのをふと思い出す。    
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