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失われた時間
彼は市街地のビルの3Fでそれを見つけた。
そこはソファの並んだ小部屋。
彼はドアを閉めて一番奥のソファに腰をかけた。
右の拳を固めてテーブルに叩き付けるが、衝撃で灰皿がころげ落ちるだけだった。
彼は痛む拳を解き頭を抱えた。
永遠に失われてしまったいつもの日常。
あの惨劇によって全てが変わってしまった。
だが、少しでも前に戻るすべがあるとすれば・・・
テーブルに置いてあるリモコンをぼんやりと見つめるていると決意の目に光輝いた。
リモコンを操作するとモニターの画面が光った。
ある儀式を行うためだ。
彼は本来こんなことをしている場合ではないのだが。
失ってしまった友を弔うため。
自らを奮い立たせるため。前に進むために必要だと思ったのだ。
一心不乱に画面を見つめる彼は気が付いていなかった。
部屋のドアがうっすらと開いていることに。
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