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無邪気な少年
チロルは月明かりが照らす森の中を歩いていた。
右手には斬鉄剣と呼ばれるこの世に斬れない物はないと言われる剣を持ちながら。
『また皆殺しちゃおっと♪』
未だ覚めぬ夢の中をチロルはさ迷っていた。
森を移動したのはそのためだ。
市街地には人が沢山いるだろうが、見通しがいいため不意打ちは困難。
剣を支給されたチロルにとって好条件とは言えなかった。
以前なにも考えずに参加者を襲い最後には返り討ちにあってしまった。
それでは、また遊べなくなってしまう。
――今度は慎重にいかなきゃね♪
暫く森の中を歩いていると後ろから物音がした。
『!?』
チロルはすぐに後ろを振り向く。
『んもう!この木お邪魔だゾ!はぁ・・・・オラもう疲れたゾ・・・・』
このゲームには似合わない子どもの声だ。
チロルはゆっくりとその声の主の元へとむかう。
だが先に声をかけてきたのは声の主の方だった。
『はっ!綺麗なおねいさん!』
チロルはその声に一瞬驚くが気にせずに歩きだす。
『なにしてるのかな?かなぁ?』
チロルは笑顔を作り声の主に問掛ける。
『なぁ~んだ。おねいさんかと思ったらお兄さんだったのかぁ。』
声の主は無警戒にチロルにむかい歩きだす。
『あれ?』
『オラ野原しんのすけ!ちょっぴりシャイな5才児だゾ!』
しんのすけは、いつものように相手の反応を見ずに元気よく自己紹介した。
『そっか!しんのすけ君って言うんだね♪』
『んもぅ~!お兄さん!おなら臭いぞ!オラのことはし・ん・ちゃん。って呼んでね(はぁと』
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