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職員室を後にし携帯を取り出すと、聞き慣れた音が鳴り渡る。
トゥルルル…
3回目の音が鳴り終わる前に、これまた聞き慣れた声が耳に伝わる。
「涼?担任の先生から聞いた?お父さんが…」
「うん、聞いた。母さん、大丈夫?」
「お母さんより、あなたは自分の心配をしなさい」
正直に意外だった。あんなに親父にベッタリで、何をするにも親父がいないと駄目な母さんが、慌てふためくどころか、動揺している気配が微塵にもない。
「え?う、うん。とりあえず今から帰るから」
「分かった。じゃあ、お母さんも今から帰るわね」そう言って電話を切った
授業中なので鞄を取りに行くのはちょっと気が引けて、そのまま帰る事にした。
どうせあのあの親父の事だ「冷静に論理すれば分かるだろう?」なんて嫌味を土産に帰ってくるだろう。しかも、意外な程すぐに。家に帰るまでの時間は、そんな事を考えているとすぐに過ぎた。
携帯に目をやると、時間はまだ9時半だった。
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