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「おっと。正拳のおかげで目は覚めたよ」
避けた反動で千佳さんがよろけない事を確かめてから着替える。その間は黙ってくれていた。
着替えが終わると財布と携帯をポケットに詰め込む。あとは…「着替え終わったな?じゃあ行くぞ」
考える間をくれない。
「ちょ…そんなに急ぐの?」
「黙って着いてこい」言うと踵を返す。
はぁ…静かにため息を付いてから着いていく。
家に鍵を掛け、山下先生…もとい、千佳さんの姿を探す。いない…?そう思いかけると車のクラクションが聞こえてくる。
「矢上!こっちだ!」まるで罵声かと感じるほどバカでかい声がする。
はぁ…またため息が洩れる。「溜め息なんて付いてる場合か!」バレてるし…
車に乗り込む…前に、車にビックリした。MR-2…しかも赤。女が乗る車じゃねぇ…
マジマジと眺めていたいが、これ以上眺めているとまたでかい声が飛びそうだ。さっさと乗る事にした。
ドアを開け、シートに座り、ドアを閉める…その瞬間に発車した。
「ちょっと、シートベルトくらい締めさせてよ」
「走りながらでも締められるだろう」
「そりゃそうだけど…そんなに急いでどこに行くの?」
「学校だ」
「はぁ?俺、私服だけど?」
「構わない」
「いや、意味がわからないから」
「いちいち五月蝿い奴だな、少しは静かに出来ないのか」
「さっきまで怒号の声を出してたのは千佳さんの方じゃんか」
「呼び捨てにしろと言った。そして小言が五月蝿い」
「呼び捨ては無理だって。わかんねぇ事を聞いただけでこの扱いかよ…」
「ふっ…わからんついでだ。これを付けろ」
ダッシュボードから無理矢理押し付けられたのは一対のピアスと一対の指輪だった。
「これは…?」
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