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流石に授業中なだけあって、生徒の姿は無く、先生も教室や準備室で色々と作業をしている様だ。
…千佳さんを除いて。
「…ねぇ、着いたはいいけど、どこに向かってるの?」
「……」
「はいはい、黙って着いて来いって事ね」
「……」
「なんだよ、俺が一人言いってるバカみたいじゃん」
「……」
「ねぇってば」
言いながら千佳さんを追い越して顔を覗き込む。
…息を飲む程に真剣な顔をしてる。眼も合わないし、会話をする余裕がない様にも見える。その顔を見た瞬間に何も言えなくなり、茫然と立ち尽くしてしまった。
(え…?別に怒らせる様な事はしてないし、何かを考えてる様でもない…
あれは…そう、決意とか覚悟とか、腹を据えた眼だ)
そう気付いたと同時に
「何をしている。置いていくぞ」
20メートルほど先から声がする。
「どんだけ歩くの早いんだよ…つか、どこに眼を付けてるから分かるんだよ…むしろ置いてってくれた方がいい…って、ツッコミを考えてる場合じゃなかった」また一人言を言ってからおいかける。
それから1分もしない内に校庭に着いた。どの学級でも体育はしてない様で、見渡せる範囲はガランとしている。
「ちゃんと生徒がいない事を考えて場所を選んだ」
唐突に千佳さんが口に出す。
「いや、全然説明になってないから」
「時間がないと言った。それに説明するよりも実際に体験した方が早い。
…なあ、八神 源太?」
「…はぁ?」
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