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草原には、歩いて1日もかからずついた。ジェイの背中に乗れば一瞬だったのだろうけど。
どんよりとした雰囲気を肌で感じる。あたしは鈍感なほうだけど、それでも感じるのだから、相当のものだ。
「影が媒体になっているのですね……」
カイルが嫌そうな顔をして分析する。
――媒体?
難しいことを言っていて、さっぱり意味がわからない。でも説明してもらってもわからないのだから、最近では聞くことも遠慮している。
「邪悪なものにあてられ、凶暴化するのでしょうか」
カイルはジェイと小難しい話をする。
「どうだろうな。でもありえないことではない。影を出しているのはあのおっさんだろ? なら相当邪悪だ」
「言いますね、ジェイ」
「オレは正直ものだからな」
話し込む2人をよそに、あたしは草原に足を踏み入れる。ブーンと耳鳴りがした。こんな感覚は初めてだ。いったいどんな魔物がいるのだろう? ぐるりと草原を見渡す。しかし、霧のせいか魔物はもちろん生き物の姿も見えない。
「ミツル、きますよ」
そんなこと言われても。あたしには、敵が見えない。
「戦闘開始です」
カイルがそう言うと……頭の上を何かが通った。
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