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「ミツル、ミツル」
ゆさゆさと揺すられる。いい気持ちで寝ていたのに、無理やりに起こされる。あと5分、いや10分! 寝させて! 頑なに目をつむった。
「仕方のない人ですね。早く起きないと……」
耳にふうっと息が吹きかけられる。ビクッと体が震えた。
「食べちゃいますよ」
手が握られ、持ち上げられる。次の瞬間――
ガブリ。
「いだーっ!」
思い切り噛まれ、飛び起きる。
「おはようございます、ミツル」
「なんで噛むんだよ、カイル!」
歯形のついた手を振り、キッと睨む。ピンク色の瞳は、嬉しそうに揺れた。
「怒ったミツルも可愛いですね」
「だぁかぁらぁ!」
カイルはよしよしとあたしの頭を撫で、くすっと笑う。
「違う意味の“食べちゃう”方が良かったですか?」
「違う意味?」
わからずに首を傾げると、カイルは中腰になり、私の顔に端麗な顔を寄せる。
「ええ、もうひとつの意味です」
何だかドキドキする。胸が張り裂けそうなほど、騒いでいる。
「試してみますか?」
ニヤリと笑う表情が色っぽくて、見とれてしまう。うん、と思わず頷きかけた。
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