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用意を済ませると、宿屋を出る。
「カイル」
「はい?」
「もう……体は平気か?」
魔方陣だとか、王国魔術師だとかはよくわからないけど、そのせいで死にかけたカイル。グーダがいなければ、隣を歩いてくれることも、一緒に寝ることもできなかった。一人で寝ると不安になる――カイルが死んじゃったんじゃないかって。そばにいるのに、どうしても寂しい。そんなこと、言えないけれど。
「もう大丈夫ですよ。ミツルは心配性ですね」
カイルは困ったように笑う。
「あはは、そうかもね」
「ミツルこそ、お尻はもう大丈夫ですか?」
「うげっ」
ゲイラルーダに乗ってすり切れたお尻の皮。座るのさえつらかったけど、グーダに調合してもらった塗り薬で完治した。ただ、お尻に薬を塗るのに自分ではうまくできず……カイルに塗ってもらうはめになったのだ。
――思い出すだけで恥ずかしい。
カイルに見られることが、とても恥ずかしい。前まではそんなことなかったのに。
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