プロローグ

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 愛栖と出会ってから、早いものでもう一ヶ月半程の月日が流れた。  当然季節もそれに伴って少しずつ前に進む為、愛栖と出会った頃よりも大分暑くなっている。  一体どこまで暑くすれば気が済むのかと、馬鹿みたいに眩しく輝く太陽を睨みつけながら今日まで過ごしてきた訳で。  家に居るときは、部屋でクーラーをガンガンに効かせて快適生活をエンジョイしていた。  部活もあったが、……まぁ大抵は涼んでいたな。  そして現在、夏休み最終日の夜――。 「まだだよ、絶対こっち向いちゃ駄目だから」 「分かってるよ」  俺の視界の及ばない真後ろからは、愛栖の声と衣擦れ(きぬずれ)の音が耳に届いてくる。  俺と愛栖は今、部屋に居る。  で、俺はドアの方を向いている。  愛栖は今、俺の真後ろで服を脱いで……と言うと語弊があるか。  プロローグから少々内容がアレだと勘違いされかねないので、言い換えておこう。  愛栖は、今、俺の後ろで着替えている。  明日から毎日着ることになる、我が高校の制服に、だ。  明日から愛栖は俺と共に学校に行くことになるのだから、嫌でも着ることになるというのに、我慢できなくなったらしい。  で、着てみるから、俺に感想を述べろ、と愛栖は言うのだ。  いや、感想って言われてもな……。  
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