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学校から帰ると、テーブルの上にバスケットと赤いホッカムリが置いてあった。
「今日もやるんかいな。」
あたしはため息を盛大に撒き散らすと、無造作に赤いズキンを被る。
いっつも思うんやけど、オカン、これ、防災ズキンちゃうか・・・?
バスケットの中は、チープなワインに誰かの土産のチーズ、近所のパン屋のフランスパン、そして、昨日の煮物が入ってるところに生活感を漂わせていた。
あたしはバスケットを手に下げて、玄関を出る。
鍵をかけて・・・、よし、じゃあ行くか。
「いってきま~す。」
「おっ今日も行くんかい。偉いなぁ。優しいなぁ。」
交番のオッサンが手を振っている。
ええなぁ。
あのオッサン、出番あれだけやで。
あたしゃこれから、婆さん家まで歩かにゃならんっちゅうの。
めんどくさいわぁ~。
狼の相手もしんどいねんて。
あぁあ。
あたしはトボトボと歩く。
そう。
普通の住宅街の中を。
赤いホッカムリして、時代遅れなバスケット持って。
「最悪や。」
あたしはトボトボと歩いていった。
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