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主人公は華の17歳、名は楓(仮)。
どちらかというと住宅地にあるフツーの家に母と姉の三人で住んでいる。
ウエスト近くまである長い黒髪に春先の風を孕ませながら玄関の扉を開けた。
「ただいまー」
「お帰りー」
茶色い金物でできた玄関扉を開けると、見慣れた、何の変哲も無い地味ーな白の壁紙を背景に、二十代後半位だろうか、日本では一般的な黒目黒髪の、決して人相が悪いわけではないその辺にいそうな若い男が、背景に花が飛びそうな、痛々しいほどにこやかな笑顔で出迎えた。
「……誰?」
一瞬固まっていた楓が不思議なモノを見る目で言う。実際かなり不思議なモノだ。
「うん?僕だよ僕」
状況についていけてない楓に答えた男の口調は馴れ馴れしく、まるで僕僕詐欺のような物言いだ。
「ああ、」
楓は男の存在に思い当たったのか、ぽん、と軽く手を打つと、男を指指して叫ぶ。
「泥棒!」
「え、ちがっ。何でそうなるの?」
男が不審者だからである。
「とりゃ」
楓は不審者を捕まえようと腰のベルトに差してある細身の剣を抜き、そのまま男に切り掛かる。
「ちょっ、だから違うって。というか捕まえるのに切り掛かるはおかしいだろ?!」
つっこみながらも男がひょいと攻撃を躱すと、楓は男の肩を掴み軸にした見事なターンで素早く切り込んでくる。
が、男は素手のまま剣を掴み、もう片方の手で手首を掴んで取り押さえる。
素手、といってもちゃっかり魔力でコーティングでもしているのか刃で手が切れることはない。
「あっぶないなー。てか何故に剣?」
良い子の皆さんは玄関で人に切り掛かってはいけません。殿中でござる。
……だからって通り魔もダメよ?
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