春樹と沙羅

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『お疲れ様~』 カチンとグラスが当たる音がする。 私はモスコ、伸之クンはハイボールで乾杯。 落ち着いた店内には、私達の他にはお客はいない。 『沙羅チャンと飲みに来るの初めてだね。』 『考えてみれば、そうだね。ふたりっきりは初めてかも~。』 ふふっと笑う私に、伸之クンも笑顔になる。 『今日の沙羅チャンがご機嫌ナナメだったのは、春樹が原因?』 『…え?なんで…?』 『わかるよ、好きな子は常に目で追い掛けちゃうからね。』 ふわりと、それでいて少し切なそうな笑顔で私を見る。 『返事は急がないけど…前向きに考えてくれないかな?俺は、春樹よりは真面目に考えてるよ、沙羅チャンのコト…』 それだけ言うと、伸之クンはハイボールのグラスを一気に空けて、マスターに『チェック』と一言告げて、バーを出ていく。
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