春樹と沙羅

14/19
前へ
/73ページ
次へ
店を出てから、どうやってマンションまで帰ってきたのかわからない。 ただ、ぼーっと歩いていたのだろう。 ロックを解除しようと、エントランスに立ったとき、後ろから急に抱き締められる。 『ッ…‼‼』 恐怖が込み上げてきて、声が出ない。 『こんな時間に歩いて帰ってくるなんて、無防備にも程があるよ…沙羅』 よく知っている、愛しい声主が私の私の首筋に、チュと口付ける。 『…はる、き…?』 『正解』 くすっと笑う声が聞こえたと思うと、 『中に入れてくれないワケ?』 あぁ…また私は自分で自分を苦しめてしまうのだろう。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

593人が本棚に入れています
本棚に追加