第三章

2/7
前へ
/16ページ
次へ
  世界が混乱に明け暮れたのもはじめの三日間だけで、その後はなんとか落ち着きを取り戻してきていた。 野崎の戻ったグローバル・ライト社では、自社のマルチ・サテライトがふたつとも生きていることが幸いし、この三日間でかなりのデータを回収することに成功していた。 野崎研究部長ひきいる情報管理班は各国から集まるデータを統合して「ラジオ・バリア」と名付けられた反射体の影響を調べ、いっぽう三村開発チーフひきいる解析班は、さまざまな角度からのアプローチでラジオ・バリアの解明に全力をあげていた。 文部科学省が中心となって組織された緊急対策班は、野崎と三村が実質的な指揮権をもって運営されるようになった。 グローバル・ライト社は日本の科学技術の最先端に位置する会社でありしかもその中心にいるのが彼らだったのである。 そしてこれまでにわかったことは、あらためてラジオ・バリアを見れば、世界に対して潰滅的な問題になるようなものではないらしい、ということだった。 まず、上空五百キロのところにバリアがあるということは、スペースシャトルや低軌道人工衛星にはほぼ影響がないということ、電波の反射に対しては出力さえしぼれば実用レベルの状態で使えるということ、そしてアルベド効果による太陽光バリア内反射の影響は皆無だといったことなどである。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加