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「50メガトンの核弾頭をのせたまま打ち上げるって、受付の女がいってたぜ」
NASAの管制室を彷彿とさせる物々しいコンソールの群れを尻目に、本部の外れ、室内の奥まったところにあるひな壇型の外来スペースに陣取って二人は行き交う人々を眺める。
「まさか。それで放出された放射線で、自分たちをフライにしようってのか……ありゃ単に物理的障壁か力場的障壁か確かめるために打ち上げるんだよ」
野崎は糊の利いたブラウンのスーツに身を包み、国連から送られてくるミサイルの予定弾道が表示される壁一面の分割大画面を注視する。
弾道は地上から離れて衛星軌道までは大きくまがり、太平洋の上でバリアに到達するようになっていた。
三村は襟首に指を突っ込んでネクタイを緩めると口元のソースを舐めて合掌する。その時、指令室の大画面の一画で白色の噴射煙がまたたき、野崎と三村の見守る中で「おお」というどよめきがはしる。
文部科学省の役人がスクリーンのまえで、食い入るように見つめていた。
「なあ三村、バリアが物質ではなくエネルギーの場のようなものだったら、メディアが騒ぐように人類に恵みをもたらすと俺は思うんだがな」
「お前その楽天主義をどこで吹き込まれた………放射線や宇宙線が地表にとどかないってことは、これまでの天体観測がほぼ役に立たなくなるってことだ。
X線パルサーはどうやって見る、太陽活動の観測はどうするんだ?いわば目つぶしをくらわされたようなもんだろう……」
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