第三章

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  離昇していくミサイルをながめ、三村はタバコを吸いつけた。 彼は不安を払いのけるように煙りをちらし、野崎と前日に話し合ったことを思いかえす。 バリアの特質のうちでもっとも注目にあたいするといえばエネルギー問題だろうと、ふたりは考えていた。 なにしろ原子力に頼らずともそれをはるかに上回る電力を、バリアは提供してくれるかも知れないのだ。 これは二人の研究に光明を当てることでもある。 彼らの研究する分子解離システムは実用化すると核融合に匹敵するエネルギーが不可欠だったが、それをバリアが肩代わりしてくれるのだ。 このシステムは数兆電子ボルトの電子ビームを束にして物質にあてることで基素原子レベルで分解し、原子の重さや性質によって自由に取り出すことができるもので、運用すれば地球のあらゆるものを無害に処理できるようになり、完全再生が可能なのだ。 すでに野崎は基本設計にはいっており成功すれば国家プロジェクトとして起動、どの段階まで実用可能なのか検証することになっていた。 野崎は通りがかった大臣の一人と席を立ち、しばし話し合ったあと三村にタバコをねだりにきた。  
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