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「わりぃ、俺好きなやつが出来た」
聡が私を見てニヤニヤ笑いながら言う。
「…そう、浮気してた女よね?」
下に目線を落とし、私は低い声で答えた。
「なんだ、知ってたんか?なら話は早い、お前よりアイツがいいんだ、別れてくれよ」
「…知ってるも何も…」
私の部屋に女連れこめば、普通はバレるでしょ!?馬鹿じゃないの?コイツ。
怒りに震えて両手に力が入る。
「な?いいだろ?何も言わないって事は、いいって…」
バチーンッ!
思わず勢いで聡の顔を叩いた。
手の平がビリビリする。
「ってぇ!何すんだよ!!」
「いいわ!別れましょ?」
ニコッと笑った後、くるりと後ろを向き
「…さよなら」
歩き出そうとした時、頭に痛みが走った。
「ブスが!意気がってんじゃねぇぞ!!」
振り返らずに足元に目をやると、聡に渡した私の部屋の合鍵…
もういらないもんね。
そっと拾ったあと、自然と流れてくる涙を拭きながら、後ろを振り返る事なく歩き出した。
好きだったのは私だけだったのかな…
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