泡と炎

2/6
前へ
/26ページ
次へ
高校の入学式……一人の新入生が回りの注目を集めていた。 通夜輿 慕 (つやこし したう) トップの成績で入学した彼女……名家のお嬢様である彼女がなぜ公立の平凡なこの高校を受けたのか? 教師の間で様々な憶測が流れたが誰もその真実に気が付けた者はいない…… 入学式の式典……彼女に注目しているのは教師達だけでは無かった。回りの男子生徒が彼女の容姿の美しさに色めき立ち校長の挨拶などまるで聞かずに少しでも彼女を見ようと努力している。 愛らしく常に少し潤んでいる大きな瞳。潤いをたっぷり含んでいる艶やかな唇。まるで人形のように小さな顔。細く光沢のある長い髪を後ろで一つに束ねる大きな白いリボン。緩めの制服から伸びている真っ白で今にも折れそうな細い手足。体は華奢なのに胸だけは豊かに膨らんでる。 男子達はおとぎ話の中から現実に現れたお姫様の様な完璧な美少女を見る度に憧れと自分には決して手の届かない存在であろうとの諦めの混じった溜め息を付く。 慕姫……中学の時に裏で呼ばれていた彼女のあだ名…恐らく高校でもそう呼ばれるに違いない。 会場の視線を集める彼女……しかし……一人だけ…………冷徹に……凍て付くように……静かに……見つめる瞳…………彼女の隣りの席の一人の女子。その女子が自分の右の席に座る「通夜輿 慕」 を見つめるその瞳には殺意にも似た暗い光が満ちていた……
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加