Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.1 憎しみ

5/36

636人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
ふと目が覚める。 ここは二階にある自室。そして自分はベッドの上。 暗い部屋の中のはずだが、周りがよく見えるのは、ただ一つの出入口であるドアがわずかに開いていたからだろう。 下で誰かがまだ起きているようだ。話し声が聞こえる。 「パパ……?」 聞き慣れた声が聞こえる。 聞こえる声は二人分。 一人はママ。もう一人は……父親、だろうか? 父親の事はあまりよく知らなかった。 家にいたことなどないし、母親は話してくれなかった。それでも母親といるだけで幸せだった。 階段を下りていく。 声がだんだん近くなる。言い争っているようだ。 二人がいるリビングのドアの前に着く。 ドアはわずかに開いていたので、隙間からリビングの明かりが廊下にもれている。 リビング前の廊下は暗いので二人がこちらに気付くことはない。 ドアの隙間からそっと中の様子を見る。 奥にいるのはママだ。 そしてママに向き合いこちらに背を向けている男性がいる。 パパかもしれない、という期待に胸がふくらむ。 しかし───。 「だから止めろと言ったんだ!」 男が激しい口調で叫ぶ。 「お願いだから考え直して!」 ママも必死に叫ぶ。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

636人が本棚に入れています
本棚に追加