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一般家庭ならここで残念だったねと笑い話になるところだが、サラの場合はそうはいかない。
子供ながらに、大好きな番組を変えられたという怒りは憎しみに変わる。
サラの両眼が憎しみを伴い変化を───しようとして、視界を阻まれた。
モリーはサラの両眼を優しく塞ぎながら、なだめるように言う。
「ダメよ。番組を変えられたぐらいで人を憎んではダメ。
……さ、早めに食べて、学校に行く準備をしなさい。始業式から遅刻するなんて冗談じゃないわよ」
「……ハイ。ママ」
母親の心を感じ取ったのか、先程の憎しみは全て振り切ったといわんばかりにサラは笑顔で返事する。
そのエメラルドの瞳にはもう、憎しみの陰も残っていない。純粋で無垢な少女そのものだ。
朝食後、サラは学校に行く準備を、モリーはその手伝いをしにリビングから去って行った。
忙しい足音が遠退いていくごとに、リビングに静寂が訪れる。
……モリーはテレビを消したが、画面の向こうでは先程報道をしていたキャスターの、首から上が無くなっている映像が流れており、大量の血が涌き水のように溢れ出ている。
間もなくして、しばらくお待ち下さいというテロップが流れ出した。
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