636人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
サラが学校に着いたころ、モリーは家事を全て済ませ、休憩タイムへ突入していた。コブ付きの主婦には唯一不可欠な一時だ。
テーブルに自分へのご褒美に用意した紅茶とお菓子が心地良い香りを漂わせている。
滑らかで味わい深い紅茶は、飲むと今までの家事の疲れを癒してくれる。
自然、ほぅ、という感嘆に似たため息も出て、自分でも顔が和やかには程遠い、緩みきっているのがわかる。
お菓子に手を伸ばし、取りかけて玄関で鳴るチャイムに至福の時間を遮られる。
〔あら、誰かしら?〕
気持ちを切り替え玄関へと向かう。
ドアを開ける前に、もしかしたら娘かもしれないという考えが一瞬頭を過ぎる。
「サラ?」
ドアを開けると、普段通りの景色が広がっていた。
「あら……変ねえ?」
不思議に思いながらもドアを閉める。それと同時にドアの真向かい、後ろの小型な戸棚の上にある電話が鳴る。
電話の所まで行き、受話器に手をかけようとしたその時、モリーは背後に人の気配を感じ、振り向いた。
サラが通う小学校は新任教師が大半であり、今まさに受話器の向こう側でモリーの返事を待っている、サラのクラス担任であるヘレンも新任教師の一人であった。
最初のコメントを投稿しよう!