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ヘレンの言葉に、あぁ、きっと遅刻したことを責められるんだろうなと覚悟を決め、母親としての恥ずかしさと謝罪の意味も込めてモリーは返事する。
「あー、すみません。この子ったら忘れ物したみたいで今家に取りに帰ってるんですよ」
午前中の休憩タイムを娘に邪魔された揚句、担任にまで咎められそうな状況に、モリーはサラを縛って天井から吊してやろうかと少しだけ考えた。
すると、電話の向こう側から担任の意外そうな声が返ってきた。
『えっ?サラちゃん。今そっちにいらっしゃるんですか?』
「?ええ。今玄関に居ますけど」
ヘレンの驚きではなく疑惑に近い妙な反応に疑問を覚えるモリーだが、ヘレンはモリーがおかしなことを言ったとばかりに笑ったように信じられない言葉を返してきた。
『そんなハズないですよ。だってサラちゃん───今、私の隣にいるんですよ?』
「───え?うちの娘が、そちらに居るをですか?」
モリーにはヘレンの言っている意味がよくわからなかった。
だってサラは今自分の後にいる。とっくに登校したはずなのに、忘れ物に気付いて引き返してきたのだ。
だが、学校にいるはずの担任はサラは学校にいるという。
そんなはずがない。
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