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何の冗談を言っているのだろうか、この担任は。
同時に二カ所に存在するなんてどんなマジシャンにも、まして八歳の子供にできるはずがない。おかしいのはヘレンか自分か。
どちらかが精神病院に通わなくてはならないかもしれない。
それともおかしいのは今この状況か。
戸惑うモリーをよそにヘレンは言葉を続ける。
『サラちゃん、学校に来てからずっと落ち着きがなくて、何か嫌な予感がするから、どうしても家に電話するんだって聞かなくって。
連絡するのが遅くなりまして、申し訳ありませんでした』
電話口からヘレンが謝る声と、小学校らしき子供たちの騒ぐ声が聞こえてくる。どうやら、ヘレンが電話をかけているのは小学校からで、子供たちの声が遠巻きに聞こえるのは、職員室からかけているからだと思われる。
事実、サラは学校に来ていた。しかし何かとてつもなく嫌な予感がしたので、ヘレンに無理を言って家にいるはずの母親に電話させたのだ。
モリーは受話器から耳を離していた。
信じられるわけがなかった。学校にいるのが自分の娘なら、今自分の後にいる少女は誰なのか?電話口のヘレンの『もしもし?』という言葉も耳に入らなかった。
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