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あまりの絶望に股から液体が流れてきた。
次いで涙が溢れてきた。
母親(モリー)の側まで行き、ただ寝ているだけだ。揺すれば起きてくれるという淡い希望を抱きながら、サラはか細い声で自分の母親を呼び始めた。
「ママ……ねぇ……起きてよ……ママ……。
……ねぇ起きて………………。
~~~~~!!!!
起きてよ~~。やだよぉ~~~~……一人はやだよぉ~~~~。ねぇ起きてよ……………………ママ」
モリーは動かない。
わかりきっていたことだった。
もう死んでいるのだと、子供なりに理解してしまった。
サラは泣いた。
ただ泣いた。泣くだけ泣いた。
おそらく一生分泣き続けたと思われる。
幼い顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
こんなにも悲しいのに、母親は起きてくれない。
今この時より、サラ・フィーラスの、人生の大半が意味を失った。
その様子を一部始終、遠く離れたビルの屋上から双眼鏡で観察している者がいた。あの少女である。
双眼鏡の下からこぼれる笑みと涙が見える。涙が出るほどその状況がたまらなかったらしい。
モリーの死を見るのが嫌で、耐えきれなくて、認めたくなくて、サラは動かないモリーの体を覆えるほどの布を被せた。
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