637人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
時刻は、夜の八時半。
賑やかなアメリカも、少しずつその喧噪を失くしていく時間帯。
夜の繁華とは違い、静まり返ったサラ達の家の、街の光を遮断する閉め切られたカーテン。そこからおぼろげにこぼれてくる微かなネオンの残滓が、暗いリビングを照らす。
サラはリビングの、自分の特等席であるソファーの上でうずくまって肩を震わせていた。
何もできなかった自分を何度も責め、自問自答を繰り返して尚、どうしてこんな事になったのか。
その答だけがどうしても浮かばない。何度も何度も。自責という迷路に迷い込んだ者の末路が、今のサラだった。
ふいに玄関のチャイムが鳴ったので、涙を拭いて(それでも泣き腫らした顔は隠せなかった)玄関に向かいドアを開けた。
玄関の外にはコワモテの男が二人。二人とも確実に十人は殺してそうな顔だった。
「お父さんかお母さんはいるかい?オジョウチャン」
手前にいる男がサラに話しかける。母親は二人の男からは見えない位置へ運んだ。
サラはゆっくりと静かに首を横に振る。
「そっか……ならしょうがねぇや。じゃあ親御さんに伝えといてくれや。お父さんの借金の肩代わりによぉ、この家明日から差し押さえっから」
最初のコメントを投稿しよう!