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「え……?」
サラは自分の耳を疑った。こんな酷い事が他にあるだろうか?
母親を失ったばかりだというのに、今度は母親との唯一の思い出が生きるこの家が、ほとんど知らない父親の借金だとかで見ず知らずの男達に奪われるのだ。
「そんな……っ、待って、止めてよ!」
帰ろうとした二人の男のうち一人の足元にしがみつく。
「えぇい!知るかよ、これが俺達の仕事なんだからな」
男は欝陶しそうに足にしがみついていたサラを振り払う。その反動でサラは尻餅をついた。
「待っ───!」
追い掛けようとしたが、痛みをこらえているうちに男達は行ってしまった。
……今度こそ、何もかも失った。
サラは失意と無念を胸に再びリビングに入ってきた。
ふと、食事用のテーブルの上に小さいケーキと母親の得意料理のクリームパスタが置いてあることに気付いた。
そこではたと思い出した。四月五日はサラ・フィーラスの誕生日だった。母親はサプライズで祝うために黙っていたのだ。
何の感情も浮かべずにサラは椅子に座り、ケーキを食べ始める。月の光がソファーの右側の窓から真っ暗なリビングに差し込む。食べているうちに今までの母親との生活が脳裏に甦ってきた。
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