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───ママは、いつも自分の傍にいてくれた。
フォークが皿をつく音だけが虚しくリビングに響く。思い起こされる温かな日々は、決して届かない冷たい闇の中へ消えていった。
───ママは、自分を叱る時はしっかり叱ったし、楽しい時は一緒に笑ってくれた。つまらない反抗期に喧嘩までしたけれど、その後は必ず仲直りするのだ。
思えば、一時たりとも側を離れることはなかった。輝かしいまでに誇らしい自慢の母親。
今は───
いじめっ子から何度も守ってくれたこともあった。たとえ周りの親からどんなに非難されようとも、決して娘への愛は捨てなかった、モリー・フィーラスというサラのママ。
「……ママ。貴女は最高のママよ」
母は、強かった。
一緒にいるだけで、不思議と笑顔になれる。
話しているだけで、幸せだと感じる。
今は───
子供であれば誰もが疑わない母親への愛。母親から注がれる愛。それは純粋で、間違いなんてものは決して無くて。
ただずっと、こんな日が続くことだけをサラは願っていた。
でももう、唯一頼れる人はいない。母の最後の手料理は、涙の味がした。
今は───月の光さえ、サラには残酷なまでに痛々しい……。
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