Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.1 憎しみ

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現在サラの所持金は、家を出る時に持ってきた五十二ドル三セントだったが、ここ一週間で六万五千ドルにも及んでいた。今日も物乞いをする時間になる。 早速道行く人々に物乞いするサラだが、皆汚い物を見る目で相手にしようとしない。 でもいいのだ。夜になれば何とかなる。 夜になれば……。 暗くなり、人通りの少なくなったストックトン裏通りを、一人の女性が歩いて来た。 革ジャンに短いタイトのスカート。肩からさげているバッグはどう見てもブランド物。今でいうイケテるOLというやつだ。 いつものように飛び出して物乞いをするが、案の定、気味悪がられ、掴んだ両手は振り払われた。 しかしOLが背を向け去ろうとした時───OLは、上半身と下半身に分かれ絶命し、地面に倒れ伏した。 悲鳴すらない。まるで暗がりの路地に潜む獣が動き、獲物を飲み込むかのように、地面を流れる血液も、肉が引きちぎれる音すらも、闇に消えていく。そこはもう、巨大な闇の巣窟となっていた。 そう、サラにはこの"眼"があった。 未だ謎に包まれる眼だが、皮肉にも、サラ自身が一番毛嫌いしている眼が、今の彼女の命を取り留めていた。
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