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「君ここに住んでるの?」
「そんなとこ」
せめて女の子らしいところを男に見せようと、サラは無邪気そうに笑ってみる。
すると意外な一言が返ってきた。
「そっか……じゃ~さ。……道……教えてくれない?」
「え?」
男は気恥ずかしそうに続ける。
「いやさ、俺、最近越してきたばかりでさ。右も左もわからないんだ。あー……、今払ったの情報代……ね?」
心底変な人だが、別に自分をどうこうするといったようなことはなさそうだし、お金のこともあったので、サラは協力することにした。
「いいよ。教えてあげる。どこ?」
「え~と……ここ」
ガイドブックのある一点を指差しながら男が言う。サラも男の目的地がわかるように覗き込む。
「近いかな?」
「ああ、ここね。んー、三キロくらいかな?」
「そうか。ホントにどうもありがと。じゃね」
「バイバイ」
素っ気ない挨拶とともに手を振る男に合わせて手を振り返す。
男は去っていってやがて見えなくなった。
サラは建物と建物の隙間に戻り、うずくまるように丸くなる。
〔面白い人だったけど、多分もう二度と戻ってくることはないだろうな〕
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