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「ウン!」
サラは、心の底からこの出会いに感謝していた。
行くあての無かった自分に差しのべてくれた、優しい手。
その手を握り返して少女(サラ)は元気に立ち上がる。彼の手は予想通り、握った掌を通してぬくぬくと暖かい。
特別大きな返事を一つ。
高い位置にあるその笑顔に負けないようにと、きちんと届くことを願って出た返事は、少なからず男に伝わったことだろう。
───本当に、変わった人だ。
サラはそう思い、また感謝した。
カリフォルニアの冬は特に寒い。下手をすれば一日で風邪をひいてしまうことだってある。そんな心配さえ、期待と喜びに包まれている今のサラには無縁なものだった。
そして二人は横に並んで歩き出す。
静かに降り始めた雪が、二人を暖かく向かえ入れていた……。
Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.1 憎しみ・終
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